自然との共生を大切にし、伝統を守っていくこと。
お客様に満足していただくこと。地域振興につなげること。
これが一ノ蔵の酒造りの原点。
日本酒を含めた日本酒の醸造発酵の技術は、われわれの先人達が、微生物の存在すら知らなかった時代に自然を見据え、対話し、心を通わせながら、培ってきたものです。それは日本独特の自然観そのものです。
その伝統技術を活用し、お客様にご満足いただける良質の商品を正直に、手を掛けてつくり続けること、これが一ノ蔵創業の原点です。
この精神のもとに、宮城県内の酒蔵4社、浅見商店、勝来酒造、櫻井酒造店、松本酒造店がひとつになり、昭和48年、一ノ蔵が誕生しました。
以来、多くの方々のお引き立てとご指導のもと、安全で豊かな生活提案を念頭に事業を推進して参りました。
今後も「文化は手の延長にあり」との言葉があるように、「ローテク」と「ハイテク」との調和のとれたものづくりを目指し、可能な限り日本の文化を未来へと伝承していきたいと念じております。
初代社長、松本善作は若き代表者4人に「家族ぐるみでつき合い、喜びも悲しみも分かち合おう。力を合わせて新しい蔵を作り、できるだけ手づくりの仕込みを残した高品質の酒を造ってほしい」と願いを託しました。
手づくりの仕込みは現在も忠実に守られています。
地元・宮城は日本有数の米の産地です。一ノ蔵の酒は、主原料である米のほとんどに宮城県産米を使用し、商品の特性にあわせて10種類以上の米を使い分けています。地元の農家の方々と「松山町酒米研究会」を発足し、酒造好適米の生産にも力を注ぎ、環境保全米も積極的に使用しております。
酒造用水としての条件は、無色透明、異臭味がない、中性または微アルカリ性であること。一ノ蔵では、敷地内に2本の井戸を設け、毎日仕込み水を汲み上げています。
「米を加工しただけでは効能に限界があるが、米を日本酒に変身させる麹などの微生物の力を利用して発酵させれば思いがけないパワーが引き出せるのではないか」という発想から誕生したのが、不思議な力を秘めた天然素材「米エキス」(ライスパワーエキス)です。この研究開発に心血を注いだ徳山博士と幣社三代目社長故鈴木和郎が出会い、ライスパワープロジェクトがスタートしました。現在全国の酒蔵メーカーで結成される「日本酒ライスパワーネットワーク」では、業界の活性化を目指して様々な商品開発に取組んでおります。ライスパワーエキスを原料に用いた「米米酒」を平成13年に12の蔵元から発売しました。
アルコール分が一般の清酒の約半分である「ひめぜん」。グラスに注ぐと細かな泡が立ち上る日本酒のシャンパン「すず音」は、酒造りの伝統の技を応用して造る新しいタイプの清酒です。低アルコール酒のフルーティーな味わいはハーブをつけたり、カクテルにしたりと、自由な発想で楽しむことができます。
一ノ蔵を代表する「ひめぜん」や「すず音」といった商品開発の発端は昭和57年に遡ります。
創業者の一人である鈴木和郎(三代目社長)はヨーロッパの視察旅行でワインを彷彿とさせる酸味と、香りは高いが泡立ちが穏やかなランビックというビールに出会い、ウィーンではビールのようにジョッキでグビグビと楽しむ微発泡のワイン、ホイリゲに出会います。
その体験から「ビールとワインの間にはすでに垣根はない。日本酒もワインやビールと同じ醸造酒なのだから、固定観念にとらわれないもっと多様な造り方、飲み方があってもおかしくない」との信念のもと、それまでにない新たな商品開発がスタートしたのです。
これらの体験を通じて、「ビールとワインの間にはすでに垣根はないが、日本酒はまだまだ一口飲めば日本酒と分かる。日本酒もワインやビールと同じ醸造酒なのだから、固定観念にとらわれないもっと多様な造り方、飲み方があってもおかしくない」と強く感じ、帰国後これらの体験から生まれたアイデアをもとに、予てより懇意にしていた勇心酒造株式会社の徳山孝社長とともに「ひめぜん」に代表される日本酒らしくない低アルコール酒の開発が始まりました。