江戸時代にお酒の貯蔵樽からお店へ売る為の小さな酒樽へ火入れをせずにお酒を移した(卸した)ことを指し、「冷えたままお酒を卸す」略して「冷や卸し」という言葉が生まれたそうです。それが現在では、貯蔵タンクでひと夏越させ、旨味と丸みを増したお酒を加熱殺菌せずに生詰めしたものを指すようになり、秋を代表するお酒の代名詞として定着するようになりました。
まるみとまろやかさを生み出すには、搾ってからの熟成管理が重要。また、軽快な味わいに仕上げるためには原料米の品質が大きく左右します。原料米「蔵の華」は、ここ数年硬い米質が続き、それに応じた蒸し米や麹造り、醪の管理方法を確立してきましたが、今年の「蔵の華」は更に硬く、かつてないほど融けにくいものとなりました。
清酒酵母の選定には、香り成分として鼻腔を抜けるときに甘みが強く、軽くフワッと抜けていく香りが好ましい。また、のど越しのキレの良さを出すためには適度な酸味が必要になるため「きょうかい1701号」を選定。醪の工程では、強制的に融かすと不要な成分まで溶出すると考え、「酒質優先」で健全な醗酵管理を行いました。醗酵状態は米の融けにくさによる栄養不足にみられる穏やかな経過となりましたが、雑味が少なくまろやかな口当たりと軽やかな味わいを感じられる目標とした酒質に仕上がりました。上槽後はネオサーマルタンク(※)を活用し、熟成香を極力抑えた若さのある軽快な味わいに仕上げます。
※ネオサーマルタンク 「まるみとまろやかさを併せ持った、軽快な味わい」に仕上げるには、日本酒独特の熟成香やカラメルの香りを極力出さないことが重要です。これらは温度と時間により大きく影響し、一番温度が上がる火入れ直後の品温管理がとても大切です。火入れ直後の60℃から熟成が抑えられる10℃にまで品温を下げる時間を短縮しなければなりません。そのため、弊社ではネオサーマルタンクを導入して、火入れ直後から急冷を行い、およそ24時間の時間短縮を可能にしました。これにより若さを保ちながら軽快な味わいに仕上げることができます。
秋の旬な食材(秋刀魚、キノコ、秋ナス等)や肉類、チーズやバターを使ったボリューム感のある料理やオリーブオイルを使用した料理にもよくマッチします。 秋刀魚の塩焼き、牛肉と秋野菜のグリル、豚肉と舞茸の生姜焼き、シイタケのチーズ焼き、秋鮭とさつまいものグラタン、牡蠣のバター炒め、アヒージョ、チーズたっぷりしらすのピザなどがおすすめです。