引用元:宮城の酒
神に捧げ、人に寄り添う。塩竈に息づく三百年の酒造り。
宮城県塩竈市に蔵を構える阿部勘酒造は、塩竈神社の門前町として栄えたこの地で、約三百年にわたり酒造りを続けてきた老舗の蔵元です。
享保元年(1716年)、伊達藩の命を受けて酒造株を譲り受け、塩竈神社の御神酒を醸す御用酒屋として創業したのが始まりとされています。
当時の塩竈は、仙台藩の海の玄関口としてにぎわい、参拝客や旅人が行き交う繁華な町でした。そうした歴史ある地で、阿部勘酒造は神社への献酒という神聖な役割を担いながら、地域に根ざした酒造りを続けてきました。現在も、酒造期の始まりには安全祈願を行い、新酒の完成とともに塩竈神社・志波彦神社へお酒を奉納する伝統を守っています。
平成6年には道路拡幅に伴い新たな蔵を建設。最新設備を導入しながらも、「量より質」の姿勢を貫き、少量生産による丁寧な仕込みを続けています。宮城県産米を中心に厳選した原料を使い、米の旨味とキレの良さを両立させた、食事とともに楽しめる“食中酒”が同蔵の特徴です。特に港町・塩竈の魚介料理との相性が抜群で、地元の食文化と深く結びついた味わいを生み出しています。
また、平成15酒造年度からは清酒造りの副産物である酒粕を活かし、本格焼酎の製造にも着手。真空マイクロ波加熱蒸留という新技術を採用し、従来にない香味を持つ新しいタイプの焼酎を開発しています。伝統と革新を両立させる姿勢が、同蔵の大きな魅力といえるでしょう。
阿部勘酒造の酒には、三百年の歴史に裏打ちされた誠実な造りと、現代の食文化に寄り添う柔軟さが共存しています。華やかさよりも、日常の食卓に寄り添う“うまい酒”を追求するその姿勢が、多くの酒好きに愛され続ける理由です。
あべかん
しきのまつしま
おもたかおとこやま
引用元:宮城の酒
〒985-0057 宮城県塩竈市西町3-9